FashonTech(ファッションテック)は、ファッションとIT技術の融合による新たな方向性です。

FashionTech(ファッションテック)は、ファッションとIT技術の融合による新たな方向性です。

コンピュータ活用が社会の隅々にまで普及した現在、わたしたちの日常生活や企業の経済活動はコンピュータと情報技術、つまりITと無縁ではいられません。それら全ての根本にあるコンピュータサイエンス(情報科学)は21世紀社会の新教養と言える、というのが当研究所のスタンスです。

さて「Finance(金融)」と「Technology(技術)」をかけあわせた造語である「FinTech」などいろんな業種で高度コンピュータ活用が注目を集めています。スマートフォンのような携帯端末や、スマートウォッチのような常時身に着けることが前提の器具にコンピュータを搭載された「ウェアラブル端末」などの登場もあって、わたしたちの日常生活にどんどん入り込んできている感のあるコンピュータ活用。

しかし、身に着けるコンピュータ端末が増えていても、わたしたちが実際に身に着ける衣服には大きな変化は見られません。そんな身近な「衣服」にコンピュータ活用を取り入れたら、わたしたちの生活はどのように「もっと心地よく」を実現できるのか、そんな取組みが最近徐々に注目を集め始めた「FashionTech(ファッションテック)」です。

FashionTech ‐ 人と環境のより深い対話を求めて

そんな中、目にとまったのが、オランダ出身の女性デザイナーであるアノーク・ウィプレヒト(Anouk Wipprecht)氏が、あのインテル社と共同開発した「Spider Dress(スパイダードレス)」。世界最大級の電子機器見本市CES2015で注目を集めました。

Spider Dressはその名の通り、肩の装着部分からクモが脚を広げているような造形が目を引く近未来的なデザイン。なんと、急に人が近づきすぎると勝手に脚を広げて、着ている人のパーソナルスペースを守るという機能を持っています。

ウィプレヒト氏のデザインコンセプトは、「着ている人や環境の状態を検知して、自らアクションを取るような衣服というものはどんなものか?」というもの。世界的デザイナーたちが創り出すファッションが日常的に着る衣服として売られることを想定していないのと同じように、Spider Dressも、世の中の人を考えさせることを目的としています。

それではCES2015で、米国の科学雑誌Popular Scienceがウィプレヒト氏に取材したYouTube動画が公開されていますのでそれをどうぞ。

ファッションデザイン、ロボット工学、そしてインタラクションデザイン

IEEE Spectrum誌に掲載された記事によると、人がファッションを通して「自分」を表現したりコミュニケーションしたりすることにウィプレヒト氏は関心を持っていたとのこと。14歳のころからいそんな素材やデザインで実験しはじめ、やがてファッション業界で働くようになりました。

ここからが彼女の面白いところ。ファッション業界で働いているうちに、当時の衣服というものは外界に対してなんのインタラクション(やり取り)を取らないことに退屈してしまったそうです。それを自分でやってみたいとの思いから、何とロボット工学(robotics)に進みます。

ロボットを動かすためのArduinoというマイクロコントローラを学び、自らいろいろ実験を始めた彼女。自分のビジョンを実現するには、人と人の間のインタラクションや人とコンピュータやロボットとのインタラクションを設計する「インタラクションデザイン」という分野の重要性を痛感。インタラクションデザインは、コンピュータサイエンスの一環として研究されているHCI(Human-Computer Interaction)と近しい取組です。ファッションというまさに「肌身離さず」の世界でのコンピュータ活用において、とくにインタラクションデザインが重要というのはうなずける話です。

 ファッションと技術で、より心地よい社会を

Spider WebはそのSF的イメージで技術系の人にけるかもしませんが、例えば一般的な日本人女性には縁遠く見えるというのが正直なところ。しかしそれはわたしたちにFashionTechの可能性を示したという点では重要な取組みだったのではないでしょうか。

2016年2月の報道によると、ウィプレヒト氏はファッション業界とIT業界の連携を促進するため、米国サンフランシスコに非営利の研究開発拠点を開設したとのこと。このような取組みを通して、FashionTechによってわたしたちの生活がより心地よいものになっていくならば、そんな素晴らしいことはないと思います。

参考記事:

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