顕微鏡やビーカーが載っている机で、こちらをまっすぐ見つめる小学校低学年の女の子の写真

「プログラミングに性差はあるのか?」という疑問に答えます。能力には男女差はありません。でも、プログラミングで女の子がしたいことは、男の子とは違うようです。

子ども向けプログラミングというと「ゲームを作ろう」、「ロボットを動かそう」、「機器(デバイス)を動かそう」というネタが多いと思います。子どもたちに関心を持ってもらうための施策として考えられているとは思いますが、それが果たして女の子にも楽しめる活動なのかというとちょっと首をかしげてしまいます。

女の子と男の子とプログラミング教育」では、プログラミング教育に従事している15歳の米国女性の記事を紹介しました。男の子は、教えられたテクニックの応用に興味があり、女の子は「なぜ?どうして?」に興味がある、という内容でした。少し一般化すると、

  • プログラミングそのものが楽しい男の子
  • 「プログラミングで何をするか?」が大事な女の子

という傾向があるようです。これは、以下で紹介する、米国の非営利団体の研究報告書の結論にも整合します。今回はその報告書をベースに、男の子と女の子の「プログラミングをする動機の違い」について考察します。

プログラミング能力に性差はない

今回の記事で参考にするのは、以下の報告書です。

参考情報:

発行元はThe National Center for Women & Information Technology(NCWIT)で、コンピュータ関連分野における女の子や女性の活躍を促進することを目的にアメリカ国立科学財団(National Science Foundation)が設立した非営利団体。研究手法やデータの確実性はお墨付きです。これらは欧米での研究に基づくものですが、その結論が日本に当てはまらないと考える特段の理由はありません。

まずは同報告書の結論を一部抜粋して紹介しましょう。

「コンピュータ技術関連分野で、男女の能力に性差はない」

同程度の訓練と経験があれば、男女の能力に差はないことがわかっています。つまり、もしプログラミングなどコンピュータ関連分野で男女の構成比が違っていたり、能力に差があったりする場合は、それは性差ではなく環境によるものということです。

「女の子も男の子も、コンピュータ関連の仕事に関して誤ったイメージを持っている」

欧米でも日本でも、以下のような誤ったステレオタイプが流布しているということです。

  • 一日中ディスプレイとにらめっこで人と話すことがない(PCとにらめっこしているのは、今やホワイトカラーの特徴であってコンピュータ関連の職種だけではありません)
  • 個人プレーであってチームプレーではない(チームで一緒に目的を目指して活動しています)
  • 人間関係が苦手な人だけがコンピュータ関連の仕事に就いている(同僚や上司や多くのステークホルダーとやりとりする職種です)

「女の子も男の子も、コンピュータ関連の職種は『男の領域』と誤解している」

いわゆる「理系」への進学において男女の差が大きい日本は、特にこの傾向は顕著ではないでしょうか。

「STEM(Science, Technology, Engineering, Mathematics、つまり理・工・数学)に進む女子においても、コンピュータ関連分野を志向するものは少ない」

つまりSTEM志向とコンピュータ関連志向は別、ということです。なお、STEM志向の女子が志望する領域の上位は、医学とヘルスケア/アートとデザイン/社会科学/エンターテイメント、とのことです。

「同程度の成績の場合、男の子よりも女の子は自己を低く評価する」

これは「女の子と男の子とプログラミング教育」でも少し触れましたが、元ネタはこれです。コンピュータ関連分野は「難易度が高い」と思われがちですので、能力的に足りている女の子であっても敷居が高いということです。背中を押してくれるようなポジティブな体験が重要です。

プログラミングをする動機の性差

同報告書で一番印象的だったのは、コンピュータサイエンス(日本では「情報工学」や「情報科学」)を専攻している1434名の大学1年生を対象とする、コンピュータサイエンスを専攻した理由です。(男子69%、女子31%という男女比です。)

専攻理由のトップ3は男女に差はなく、「コンピュータが好き」「コンピュータサイエンスは機会の幅を広げる」「金銭面で今後有利に働く分野だから」というもの。しかし、よく見ると、以下のような差が見られるのです。

  • 男子学生は「コンピュータゲームが好き」「コンピュータを使って課題を解決するのが好き」「プログラミングが好き」を挙げる傾向が女子学生よりも強い(統計的に有意)。
  • 女子学生は「コンピュータで、人や社会に貢献したい」を挙げる傾向が男子学生よりも強い(統計的に有意)。

こちらのURLで同報告書の中の上記結果のグラフを見ることができます:

本稿のタイトル「プログラミングそのものを楽しむ男の子、プログラミングで何かを成したい女の子」は、上記の結果を一言で言い表そうと考えたものです。

ロボットを動かしたり、ゲームを作ったり、というのは男の子にはウケるでしょうが、それだけでは女の子の多くには関心を持ちにくいかもしれません。それでは、女の子が関心を持てるような内容でプログラミング教育をするにはどうしたらいいのか。その明確な解はまだありませんが、海外では様々な取組みが始まっています。日本の女の子たちがプログラミングを通して自分を見つけていく、そんな将来が来るといいなと思っています。

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(かながわグローバルIT研究所 森岡剛)