女性が赤い郵便ポストに郵便物を投函しているイラスト

囲碁で世界トップクラスの棋士を破り話題となった人工知能ソフトウェア「アルファ碁」。そこではわたしたちの脳の神経回路に着想を得た「ニューラルネットワーク」という技術が使われています。実は郵便は、そのニューラルネットワークを早くから取り入れていた、IT先駆者なのです。

「最近、新聞を開くと『人工知能』『AI』『ディープラーニング』といった言葉が無い日がないくらい、人工知能の進歩は大きな注目を浴びています。」と、2016年4月のかなグロブログ記事「ディープラーニングと昔話「茶・栗・柿・麩(ふ)」」で書きました。それ以降も、まだまだディープラーニングへの関心は高まり続けています。

世間が人工知能やに関心を持つきっかけと言えば、何と言ってもGoogleのDeepMindチームが開発した「アルファ碁」ではないでしょうか。世界のトップ棋士に遂に人工知能が勝利した、ということで大きな注目を浴びました。このアルファ碁で用いられた技術がディープラーニング。深層学習とも呼ばれる技術ですが、これによって私たちの脳の神経回路に着想を得た「ニューラルネットワーク(ニューラルネット)」の学習効率を飛躍的に高めています。

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実はニューラルネット自体は数十年前の伝統を持つ技術。あまり世間には知られていませんが、私たちの身近にも、ニューラルネットを用いたサービスはずっと前から存在していたのです。その一例が、郵便サービス。今回は、郵便サービスにおけるニューラルネットやITの活用について紹介しようと思います。

ニューラルネットと機械学習

コンピュータは、プログラムに書いてあるとおりに動作します。どんな判断ルールであっても、それをプログラミングしてしまえば、あとはコンピュータが自動でその判断ルールに従って処理をしてくれるので大変便利です。このようなコンピュータとプログラミングによって、わたしたちの生活は大変便利になりました。

しかし、そんなコンピュータとプログラミングも万能ではありません。例えば、そもそも人間が判断ルールを作れないような場合、コンピュータに与えるべきプログラムを書くことすらできないのです。

そして、「わたしたち人間にとっては簡単な作業なのに、その判断ルールを書くことがわたしたちにできない」という問題は実はたくさんあります。その有名な例は画像認識。画像というのは単なる光の信号の集まりに過ぎないデータを、わたしたちは瞬時に見分けて理解しますが、その判断ルールを書き下すことは実質的に不可能です。

そして、文字認識もそのような、プログラミングが極めて困難な分野の一つ。それぞれの文字は色や形、サイズも様々です。私たち人間にはそれらを見分けるのは簡単ですが、それを判断ルールとして紙に書けるでしょうか?それが無理であることは容易に想像できると思います。

しかしそれで諦める必要はありません。人間が判断ルールを書けないならば、コンピュータ自身に判断ルールを見つけさせればいいのです。つまり、十分な学習データを与えて、そこに潜んでいるパターンをコンピュータが見つけてそれを使えばいい。この目標を実現するための学問分野が「人工知能」であり、ニューラルネットはその手法の一つ。また、コンピュータに文字や画像を理解させようとする学問分野は「コンピュータビジョン」にも属します。これらはコンピュータサイエンスを構成する重要な研究分野として、多くの大学院や研究機関においてそれらを専門にする研究グループが設けられています。

コンピュータサイエンスにおける「人工知能」や「コンピュータビジョン」の位置づけについては以下のかなグロ記事があります:

郵便屋さんと文字認識

さて、郵便サービス、つまり「郵便屋さん」がニューラルネットなど機械学習技術をいち早く用いた理由はわかりますでしょうか?

Eメールなどの、配達不要な情報伝達手段が普及したとはいっても、まだまだ郵便サービスは驚くほどの数の郵便や宅配便を配達しています。日本国内だけでなんと220億件。単純に365日で割ると、毎日6000万件以上が配達されている計算になります。

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そして、配達のお届け先は、郵便物や荷物自体に日本語で書かれた「宛先」で指定されています。その宛先を読んで理解しなければ、郵便物や荷物をお届けすることはできないのです。

「宛先を読んで理解するプログラムを書けばコンピュータにもできるじゃないか」、そう思われた方は、前節を読み返してください。様々な書き方があり、多くの場合は手書きである宛先。これらを誤りなく認識できるプログラムを書くことは、現在でも実現はしていないのです。

そこで適用されたのが、ニューラルネットなどの機械学習技術。最初は、郵便番号の自動認識に適用されました。郵便番号は、印刷された枠内に、数字のみを書くもので、書き方のバリエーションが少ないという好条件。ディープラーニング以前のニューラルネットは学習効率にも様々な制約がありましたが、郵便番号認識では一定の成果を挙げたようです。(ニューラルネットだけでなく、様々な手法の組合せが用いられています。)

さて、数十年前から始まっている、郵便サービスの宛先認識の自動化。今ではどこまで進んでいるかというと、

  1. 郵便番号だけでなく、宛先も自動認識して、
  2. 宛先情報を、人間には見えない特殊なインクを使ったバーコードとして郵便物に印刷し、
  3. さらに郵便物を配達順に自動で並べ替える

ということまでやってしまっています。すごいですね!

現在の郵便自動化については以下を読むと面白いです。(ニューラルネット自体は出てきません。)

わたしたちが何気なくポストに投函する郵便物。それを仕分けて配達順に並べ替えているのは、人間の従業員ではなくコンピュータで制御された機械であるということです。

わたしの息子がわたしの両親に出すおてがみやはがき、企業からわたし宛てに送られてくる様々な郵便物、ネットで購入した商品を入れた荷物。これらが速やかに、問題なく届くのも、コンピュータとプログラミング、そしてコンピュータで制御された高度な機械が存在しているからなのです。

ニューラルネットの有効性を飛躍的に高め、現在の人工知能ブームの起爆剤となったディープラーニング手法が発見されたのは比較的最近のこと。それ以前から続いていたニューラルネットや機械学習の研究があるからこそ、ディープラーニングを様々な分野で活用できると言えます。また、ディープラーニング以前からもニューラルネットや機械学習は、わたしたちの気づかないうちにわたしたちの日常生活を便利なものにしてくれてきたのでした。

参考にした情報:

 

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(かながわグローバルIT研究所 森岡剛)