「絵本で楽しむ科学・技術・工学・数学(STEM)」シリーズ、第3弾はインドを舞台にした昔話風の物語。「さんすうのむかしばなし」という副題のとおり、STEMのうちの「数学(M)」の要素を持っています。細密画風の絵がとても美しくて、内容的にも小学校中学年からおすすめです!
書籍情報:
デミ=作
さくま ゆみこ=訳出版社(光村教育図書)のページはこちら:http://www.mitsumura-kyouiku.co.jp/ehon/80.html
Amazon.co.jpのページはこちら:1つぶのおこめ―さんすうのむかしばなし
絵本の紹介
とにかく絵がきれいで、眺めているだけで幸せな気分になる絵本です。
舞台は、むかしのインド。悪気はなさそうですが、共感力に欠けるというか、無慈悲な王様の国にある時飢饉が訪れます。王宮の米蔵にはおこめがいっぱい詰まっているのに、困っている民衆に王さまはそれを分け与えようとしないのです。
そこで登場する村娘のラーニ。ちょっとしたことから、王さまからご褒美をもらえることになりました。
ラーニの願いは「今日は1つぶ、明日は2つぶ、というように、30日の間、前の日の2倍のつぶのおこめをください」というものでした。
数学、というか算数の素養があるひとは、こんな危険な願いを聞き入れるわけはありません!しかしこの王さま、「たいした願いごとではない」と思ってあっさりOKしてしまいます。
さあ、どうなるかはわかりますよね。30日間で10億粒以上のおこめをラーニに与えて、王宮の米蔵はからっぽになってしまったのです。ラーニはおこめをみんなに分けて、王さまにもわけてあげます。それからは、王さまも良い王さまになったのだそうですよ。
この絵本、絵がきれいと何度も書きましたが、ラーニがいつも穏やかに微笑んでいるのも心がなごみます。
ところでこの本、小学校中学年くらいの子からは、どんどん増え続けるおこめの数に、王さまと同じように驚くそうですよ。「倍々ゲームで急激に大きくなっていく数への驚き」、こういう感覚って、算数や数学、ひいてはSTEM(科学・技術・工学・数学)すべてに通じるものだと思うのです。
単純なルールの繰り返しで、あっという間に手に負えないほど大きくなる数。お話は単純なものですが、何度も開いて楽しめる絵本です。
(ちなみに、この手の倍々ゲームの考え方はコンピュータサイエンスも重要です。問題の難しさがこのように倍々に増えていくような場合を避ける必要があるからですが、これについてはまたの機会に。。。)
関連情報:
- 「『1つぶのおこめ』みんなの声」、EhonNavi
(かながわグローバルIT研究所 森岡剛)
- 投稿タグ
- STEM, 数学(Mathematics)