「絵本で楽しむ科学・技術・工学・数学(STEM)」シリーズ、第4弾は16世紀のイタリアの大科学者ガリレオ・ガリレイの生涯を描いた「星の使者 ガリレオ・ガリレイ」です。STEMのうちの「科学(S)」の要素を持っています。

知っているようで知らないガリレオの業績と苦難を、幻想的な絵とガリレオ本人を含む同時時代人の著作からの引用で、とても身近に感じさせます。中学生以上が一人でじっくり楽しめる名作です。

書籍情報:

Amazon.co.jpから配信されている表紙画像です。クリックすると本の紹介ページにとびます。

ピーター・シス=文・絵
原田勝=訳

出版社(徳間書店)のページはこちら:http://www.tokuma.jp/bookinfo/9784198607821
Amazon.co.jpのページはこちら:星の使者―ガリレオ・ガリレイ

絵本の紹介

わたしが小学校の頃に伝記を読んで強い感銘を受けた偉人がいました。それはニュートン、ナポレオン、そしてガリレオの3人。今回はそのガリレオの生涯を描いた絵本ということで、その魅力をお伝えできるよう頑張ります。

ガリレオというと、皆さんはどのようなことを思い浮かべるでしょうか。人類で初めて望遠鏡による天体を観測し、そこで見たものを書物に著して社会に知らせたこと。教会の高い天井から吊るされたランプが揺れるのを観察して、「振り子の等時性」の法則を発見したこと。ピサの斜塔から物を落として、「落ちる速度は物の重さに左右されない」ことを示したこと。「地球が太陽の周りを回っている」と唱えたことで宗教裁判にかけられ、晩年を自宅軟禁状態で過ごしたこと。

教科書的にはそうなのですが、この絵本はそれら全てを、美しくも残酷なメルヘンの世界で起こった物語のような雰囲気で描きます。

ガリレオが生まれたのは1564年。ウイリアム・シェイクスピアと同じ年です。父親は織物商を営んでいましたが、音楽家でもありました。1581年には父親のすすめでピサ大学で医学を学び始めますが、自らの関心興味で数学と物理学の世界にのめりこみます。結局、ピサ大学はやめてしまい、フィレンツェで数学を教えたりしますが、1589年にはなんとそのピサ大学で数学教授になります。ガリレオがまだ25才のときのことでした。

ガリレオは、昔から受け入れられていた理論を疑い、観察と実験でそれらを確かめていくことで様々な法則を発見していきます。有名なものでは

  • 1583年には、振り子の周期は揺れの大きさによらず一定であるという「振り子の等時性」を発見
  • 1604年には、重さの違う2つの物体が同じ速さで落ちるという「落体の法則」を実証
  • 1611年には、浮力の証明

現代人からするとすでに当たり前となっているこれらの法則でしたが、当時の欧州は、観念に基づくアリストテレス物理学が受け入れられていた時代。それを観察と実験で打ち破っていくのですから、喝采を浴びるとともに、批判されることもしばしばだったようです。それ以外にもガリレオは複合顕微鏡、温度計、軍事コンパス、静水秤などでも大きな46業績を挙げていきます。

そして大きな転機が訪れます。オランダで「遠めがね」が発明されたと聞いたガリレオは、自分でもそれを作ってみることに成功します。そしてそれをつかって天体の観測を始めたのです。

望遠鏡による天体観測で、ガリレオは当時の欧州人に大きな驚きを与える発見を次々に行い、それらの成果を「星界の報告」という書籍として世に出します。(この本のラテン語の原題は「Sidereus Nuncius」、日本語では「星の使者」や「星界の報告」と訳されており、前者がこの絵本の題名に採用されています。)

  • 「磨かれた球のようになめらか」と思われていた月は、じつはでこぼこしており、地球とおなじように「大きな山や谷、深い裂け目だらけ」であること
  • 天の川は実は、星の集まりであること
  • 木星のまわりを回る4つの星を見つけ、それらを「メディチ星」と名付けてトスカーナ大公国のメディチ家に捧げたこと

さらには太陽の観測も行い、太陽黒点の存在と太陽も自転していることを発見します。

これらの発見で、ガリレオの名声は高まるばかり。そのあたりをこの絵本では以下のように描写しています。

「またたくまにガリレオの名はひろく知れわたりました。メディチ家の名をつけた星の誕生をいわうひとたちがつぎつぎにおとずれ、記念の像がたち、パレードやはなやかな式典がくりひろげられました。」
(ピーター・シス=文・絵、原田勝=訳、「星の使者 ガリレオ・ガリレイ」(徳間書店)より

しかし、ここまで有名になってしまったガリレオは、教会の標的となってしまうのです。宗教裁判にかけられたガリレオ。この絵本ではガリレオは「ひとみに星をきらめかせた子」として生まれ、「心にいつも星のかがやきを秘めている子」として育ち、様々な成果を挙げるようになってからは周囲から「われわれの希望の星」とまで呼ばれてきた人物として描かれています。そのガリレオが宗教裁判によって押しつぶされ、「そのひとみから星がきえてしまったことは、だれの目にもあきらかでした」となる有様は無残です。

この本では、ガリレオや、彼の同時代人の書いたものをたくさん引用して、当時を生きた人たちを身近に感じられる工夫がなされています。引用されているガリレオの言葉はどれも印象的ですが、一つここにも引用してみます。

「科学においては、多くの人が信じているからといって正しいとはかぎりません。たったひとりの知性が、火花のようにきらめいて、真実をてらし出すこともあるのです」
(前掲書)

最近、毎年のようにノーベル賞を受賞する日本人研究者がいるのはとても喜ばしいことです。受賞者の経歴を見ていても、「たったひとりの知性が、火花のようにきらめいて、真実をてらし出す」というのは本当にあることだと思われますね。わたしたちが住む社会では、ガリレオの時代の欧州ように、科学的な業績によって社会から押しつぶされるようなことはありません。思う存分、自分の関心興味を追及して、楽しい人生を送ることができるというのは素晴らしいですね。

1633年に宗教裁判で有罪となったガリレオは、牢獄に入れられることはなく自宅軟禁状態で過ごし、1642年に亡くなりました。そして300年以上がたった1992年、カトリック教会はガリレオをゆるし謝罪したのでした。

(かながわグローバルIT研究所 森岡剛)